堂谷木工製作所について

ものづくりの街、大阪府東大阪市にて2017年に立ち上げた当木工所は、『木工製作所』と名乗ってはいますが、主である堂谷孤空(ドウタニコクウ)一人で活動する個人工房です。木工作家ではなく、量産主体の木製品工場でもない、『ひとり木工品メーカー』と謳って活動しています。

岐阜県高山市にて木工を学び、現在はスギ・ヒノキの日本屈指の優良材の産地である奈良県川上村にて拠点を置いています。かれこれ13年のキャリアになります。現在は国産材を使用した無垢の家具、小物製作と販売を行っています。特に小型家具を主力とした製作と販売を行っています。

伝統的木工技法を踏襲しつつ、お客様に『こんなの見たことないよね!?』というお言葉を聞きたくて、創意工夫の木工をいつも考えています。

ただ真新しさを求めているのではありません。やはり木製品は使っていただいてこそ価値のあるものだと考えます。ご購入後のメンテナンスや、故障や不具合の対応など、当然対応させていただきます。

当方の木製品は、比較的軟らかで優美な木目の針葉樹(吉野杉、吉野ヒノキ、赤松など)や、硬くて強度のある国産広葉樹(クリ、ナラ、サクラ、クルミ、カエデなど)を主な素材として製作しています。

ほとんど使用しませんが、ご注文内容によっては必要に応じて工業製品(合板、ネジ類、金物など)も使用します。また塗装におきましては、植物オイル塗装や天然顔料、天然染料をはじめ、ポリウレタン塗装や合成塗料、着色剤を用いることもあります。

当方の製作品におきましては、ご購入時に製作品解説などで使用した素材を記載し、それによって使用上どのような影響があるかをお伝えしています。(販売先様サイトでの商品ページにて説明しています。)


フルオーダーメイドについて

堂谷木工製作所は、2024年現在、当方が考案・設計した木製品を自身で製作し、インターネット上で販売することが主な活動になります。

自称小さな小さな『ひとり木工品メーカー』です。

お客様のご意向をお伺いし、設計・仕入・製作・納品という流れのフルオーダー製作は、積極的には行っておりません。業務のキャパシティに余裕がないため、納品までに半年~1年以上お待ちいただける方であれば、お話をお伺いさせていただいております。


国産木材へのこだわり

堂谷木工製作所では、この国で育った木材を使って木製品をつくる事を基本原則としています。それには、次のような想いがあります。

木工で使用される木材には、大きく分けて二つあります。一つは、建築材として主に使用されることの多いヒノキ、スギ、マツ、ツガなどの針葉樹。もう一つは、ミズナラ(オーク)、クルミ(ウォルナット)、クリ(チェスナット)、タモ(アッシュ)、カエデ(メープル)、サクラ(チェリー)、ブビンガやゼブラウッドなどの輸入材も広葉樹になります。針葉樹と広葉樹の違いには、学術的なことは解説できるだけの知識が無いので省略させていただきますが、一般的に家具材として用いられるのは、硬くて比重の重い広葉樹が多く、日本古来の箱モノ家具(和ダンスなど)では、広葉樹でありながら比重の軽いキリや、スギなどの針葉樹が用いられてきました。

日本は世界から見ても森林の割合が多い、緑豊かな国です。その中の多くが、建築材として植林されたスギ、ヒノキなどの針葉樹から成る人工樹林で、戦後は建築需要の高まりもあり、積極的に植林されてきました。しかしながら時代が変わり、産地の林業従事者の減少や高齢化、何よりも安価で品質の安定している輸入木材の台頭で国産材の需要・価格は下落し、国産材の活用がなかなか進んでいないという側面があります。国の林業へ対する支援や、近年はバイオマス発電など環境意識の高まりも耳にします。また、材料の乾燥や製材技術の向上なども相まって、国産針葉樹を合板や集成構造材のように加工して利用することなど、日本の森林資源に少し前向きな兆しもあるように思います。

当方は、日本の豊かな森林資源で木製品を作ることが一番理にかなっていると考えます。スギ、ヒノキなどの軟らかい材質の針葉樹は、家具に用いるには少し難しい側面があります。優美な希少性のある木目の針葉樹は高値で取引され、主にその木目を生かして建築造作材として用いられますが、一般的に針葉樹は傷が付きやすくて柔らかいため、椅子などの家具用材としてはなかなか利用が難しい点があります。また、優美な木目は日本人の美意識に深く根差していると当方は考えていますが、その美しさは現代日本の住空間においてはかえって人工的な美しさに映ってしまい、魅力と捉えられていないように感じています。かえって節や木目の欠点のある天然木や、深い色味と、重厚でしっとりとした質感の広葉樹の方が現代の日本では好まれる印象があります。

当方はこの吉野杉・吉野檜に代表されるような国産針葉樹についても、今までと違った価値の捉え方によってその材料の使い方を考え直したり、また、異素材との組み合わせなどにおいて、新たな価値を提案できるような木製作品をお届けできると考えています。それが、日本人の美的感覚を形成する一要因と言っても過言ではない、この『日本の木』の、その産地や山に携わる方々への再生のきっかけや一助になれればと考えています。

針葉樹に対して生物学的に針葉樹よりもあとに誕生した広葉樹というグループがあります。広葉樹はナラ・サクラ・クリ・ケヤキなどの硬くて比重の重い、家具製作に適した木材です。この広葉樹の天然林は、世界レベルでその傾向が加速しています。見た目にも高級感があり、樹種の違いによって木目や色味に個性があり、カタチや高級感を表現する素材としても他に変えられない魅力があります。言うなれば美しい色や優雅な木目はそれ自体に価値があり、それを用いて作られた木製品の価値自体をも決定づけてしまう力があります。時代によって樹種には流行があります。

美しく品質の高いものが高値になることは自然なことですが、世界的に見て広葉樹においては、そこに持続可能という観点から未来を考える取り組みが弱いように感じています。資源を計画的に管理し、失われた資源を再生していくような循環は、存在しても現在は発達途上であり、途上国の外貨獲得の目的で木材が枯渇するまで先進国の需要に応えるために輸出され続けるような記事を目にし、非常に歯がゆさを感じています。

遠くはるばる化石燃料を使って輸入し、日本のような先進国で消費される。産出地では外貨の稼げる資源として、枯渇する寸前まで産出が続く。そのような非循環型の状況が未だ当たり前のように存在することに、当方としては、まず身近にある木材の魅力を引き出せるような製作品づくりをすることで、国内で木材をとりまく循環社会の輪を大きくしたいと考えています。

輸入木材を使わず、国産材を使用することが当方のポリシーです。しかし、それだけでは現状は変わりません。当方は、国産材を用いて新たな木製品を提案することによって、また、参加者様に木を使って木工を体感していただくワークショップなどを通じて、人々に木の魅力や木をとりまく実情を少しでも知って頂き、この吉野の地で生まれ、受け継がれてきた循環型の林業や、とりまく材木業界が健全で元気になり、人も山も社会も元気になってほしいと願っています。

堂谷木工製作所