A5サイズの小抽斗

もっと手軽に、手ごろな大きさと価格で抽斗を作りたいと思っていて、手元に材料があったので形にした。サイズは引き出し内寸がA5サイズより少し大きなものとした。

あまり『シンプルな形で飽きの来ない~』というような文言を言いたくない。それは単に作り手の省力化であることもある。当方の製作品は結構手を掛けすぎている部分があり、『果たしてそれが求める人にとっての付加価値になっているのだろう?』と思うこともあった。こだわりを評価して頂くお客様もいらっしゃる一方で、『盛り込みすぎて伝わっていない』部分もあるのだろうと反省し、いっそのこと肩の力を抜いて軽い気持ちで作ろうとも思った。

今回は装飾らしいものを全く無くした。引き出しの底板もシナベニヤを用い、省力化したが、引き出しの仕口などは当方の共通仕様であるものを継承し、性能面で劣らないようにした。引き出しの肉厚も9ミリとし、外側の板の厚みと同じとし、製作する上での手間を省けるようにした。しかし、ツマミだけは少し時間をかけた。

省力化の甲斐があって、価格も無垢の小引き出しにしては安価になった。無垢の木で作った本格的な造りのものを手軽に使ってもらいたい。この引き出しで、その想いの先陣を切るモノが完成したことは、やっていきたい方向性と、それを実際実行し、世に問う上での、当方にとって大事な起点となった。

ツマミはコートで言うところのボタンのようなものだと思っている。印象を引き締める要であるし、肝である。ナラの引き出しに採用したツマミの材料はなんとアカマツ。ナラの躯体にアカマツのツマミを用いるなんて、木工を学んだものからすれば邪道なのだろうが、そんなことは気にしない。アカマツのツマミは、光が透けて見えて何とも言えぬ表情で気に入っている。

しかし、やはり人気があるのは圧倒的にヤマザクラのようである。確かに色味と言い、雰囲気といい、魅力的ではある。

ヒメコマツも手元に材料があったので作ってみた。自分はヒメコマツのものが一番好きかもしれない。当初、手元に濃い色の外材があって、それを使おうと木取りまで行っていたが、安っぽくなりそうだったのでヤマザクラのツマミに変更した。

当方の定番で、引き出しを吊り桟式にすることが多いが、今回、機械と刃物とのマッチング不良が顕著で、仕口加工に若干手こずったため、組立後にネジレが出てしまって、引き出しを吊り桟に引っ掛けるとカタカタするものが何個かあり、修正を余儀なくされた。吊り桟式は引き出しの深さを目一杯深くできることや、本体の部材を減らせるなどのメリットもあるが、完成後の調整がかなり困難でもある。もっと確実な仕事をするためには、一つ一つの小さくて時間のかかる問題を克服していくしかない。

テーブルに載せても邪魔にならないサイズで、当方でも気に入っている。今回初めて製作し、17台一気に作ったが、今後も改良を重ねてもっと高精度で確実なものを作っていきたい。

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