ナラの折りたたみ棚 750

最大高さ:1198ミリ 最大幅:830(本体幅750) 最大奥行:341

市場に存在する折り畳み式の家具というものは、金属やプラ製のものは多く存在するし、木製の物でも折り畳み式の机やテーブルなど、もしくは金属脚などとのミックスで作られているものもあり、日常に溶け込んでいて馴染みのあるものである。

当方がわざわざ手間暇かけて折り畳みの棚など作っても…なのであるが、折り畳み式でありながら、本格的に作った木製品と呼べるものを意識して作った。折り畳みの構造は特別凝ったものでもなく、枠を二つ支点を中心にして広げ、そこへ棚板を渡しているだけのシンプルなものであるが、畳んだ時と広げたとき、またはその動作の最中に、各部分が各々干渉しないように考えることに時間を費やした。実際の製作は図面の段階ですでに半完成のようなもので、今回は図面製作で結構消耗した。

当方の製作品はデザイン性云々言えるようなものではなく、木工屋が稚拙なアイデアをなんとか形にしようとするぐらいのものでしかないが、機能的であるものが自然と美しさを宿すことがあるものだと自画自賛している。それは紛れもなく、木工=天然素材本来の持つ美しさを利用させてもらっている仕事という部分で補われていることに他ならない。

棚板の固定方法は上記の通り、棚下に仕込まれているボルトを脚側に埋め込まれたナットへ手で回して固定するものである。六角レンチを利用するキャップボルトを採用しているのだが、手で回して固定するだけで十分な強度が出る。すべての棚板を固定すれば、想像していた以上に全体の剛性が強い棚になった。棚板自体も、裏側を見ていただければわかるように、太めの部材で組んであるので丈夫で、それなりの重量物にも耐えられそうだ。

折り畳むと厚さ42ミリの薄さ

実は製作で一番手間のかかったのが棚板の製作で、表側は羽目板が整然と並んだ軽い印象だが、裏側でしっかりとホゾ組みしてあり、表側の装飾を兼ねた留仕口を見せつつ、裏側でホゾ組みとする仕口を、ひとつの部材で実現させるためには、溝を掘ったり切り欠いたりと、面倒な加工が増える。しかし、この棚の美しさは、棚板の美しさが要であると考えていたので、そこは手を抜かずに挑んだ。おかげで、畳んだ時の美しさも宿ったのはラッキーだった。

当然ながら、折り畳み式ということで、携帯性や利便性を意識したイベントやアウトドアなどでの使用も意識して製作したが、実際完成したものは、『折り畳みはできるけどほぼ固定式として使う家具』というイメージかなぁと思ったりする。折り畳み式とすることで、それに準じた部材配置と形になる。固定式であればこういう形にはならないであろう。可動式であることで固定式と違った側面からアプローチすることで、『棚自体』としての面白味が出せたのは良かったと思う。逆に、折り畳み式としての実用性やコストパフォーマンス性などを考えると、導入するにあたってちょっと…という部分が出てしまった。それ故中途半端なコンセプトにあってしまった感がある。『折り畳み式』という部分をコアに据えて製作したのに、その肝心な部分が製作品としての『売り』となっていない部分は、作って売る人間としては反省すべき点であり、商品としては詰めが甘く失敗であるが、モノとしてはそれはそれで面白さがある。製品なのか作品なのか…。都合よくそれらを言い換えるのは卑怯だが、もし次製作するとすれば、製品としてもっと使いやすさとコスパを考えて製作したい。よってこの初号機2台は、『試作品』として販売している。

可動部分や剛性など、『折り畳みの棚』としてのクオリティは合格であるが、棚板のロック部分の操作性の悪さや、上でも触れた手間がかかりすぎる部分での価格の上昇など、ニーズ(がそもそもあるの?)に対してのレスポンスの悪さは、改良すべき点が多々ある。作ってみてそれらが初めて明らかになるという部分では、ものづくりの面白さであり、それを仕事としている面では、ため息の根源である。

しかしながら、とりあえず形となってこの世に出現したこの棚を、まず製作した本人は可愛がっているのである。

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