広葉樹の傘立て

マカバの傘立て 最大高さ:460ミリ 最大幅:365 最大奥行:120

玄関というものは、ひとつの部屋である。それも、人が最初に出入する、外界との最前線である。客人をもてなす最初の空間であることを思うと、その需要性は想像に難くないが、そんなに難しく考えることのできない当方にとって、もっと軽い考えから「玄関に木製品のもので何か出来ないかなぁ」と考えていて、傘立てに行きついた。

クリの傘立て

傘立て_。水濡れすることを考えると、金属製やプラ製、陶磁器などが一般的であるとおもう。なんとなくであっても「木は水には強くない」と感じている人は多いと思う。確かに、木は水分によって影響を受けやすい。含水による寸法変化だけでなく、長期間の高い湿度に晒されることでカビが生じたり、最悪腐食することにある。しかしながら朽ち果てるほどのレベルになるには、一般の生活空間では奇跡的な条件でないとそうはならないのであるが、そうであっても、傘立てが木製であることは、現代ではあまり一般的ではないと思う。

適材適所という言葉があるように、傘立ての役割を考えたときに、上に触れたように木質の物はあまり適さないのではあるが、空間における木製家具の優位性、というまでもなく、単純に木の持つ美しさを、忙しく殺伐としがちな現代の生活空間においての一つの中和要素を考えると、木製をチョイスすることも悪くない、いやむしろ、木工を仕事とする者としては、そこを売りとしたいのである。

クルミの傘立て
クリ

長々と前置きするわりには、傘立てとして「ソレ、どうなん?」と問われるレベル…かもしれない。というか、発想自体が稚拙で拙速であることは、完成した今になって否めない。何度も助けられている『木本来の持つ美しさ』というものに、今回も助けてもらっているのである。

さすがに通常の使用を考えると、水濡れに対する対策はしなければらならない。この傘立てを考案中、立てた傘から滴り落ちる水をどうするか、迷った。受け皿を設けるのが一般的であるが、当方がよく見かけるのは、晴れた日などに干上がった傘立ての受け皿の汚さと、受け皿=逃げの要素であると感じている。実際は受け皿にたまった水はこまめに捨てるのが正しいのであろうが、それを実行している人がどれぐらいいるであろうか?干上がった受け皿が物語るのは「そんなことまでやってられない」の答えではないだろうかと思うと、玄関を汚さず、ただ水を受けるだけの皿を無くした方が潔いし、見た目にも、木製の傘立て自体にも良いのではないかと思った。受け皿に水を湛えたままで、干上がるまで数日間、傘立ては湿気を帯び続け、水濡れに強いウレタン塗装すると言っても、あまり傘立てには宜しくないと思った。

ただ、悪く言えば『垂れ流し』した水は、申し訳ないが玄関をさまようことになり、玄関が水濡れするという部分では、やはり「受け皿」が最終処分を担うことが求められるのかもしれない。しかしながら、玄関床はそもそも水濡れしても大丈夫なように作られている(はず)であり、(古い家屋でドレン口のある玄関も見たことがある)、ただ逃がした水で傘立てが長時間晒されないように、高さ10ミリ程度ゴム脚で浮かせた。ゴム脚の効果として、水濡れへの対処もあるが、モルタル床やタイル床の玄関(今時あまり無いかもしれないが)でも安定する。ゴム脚を履かすことによって、傘立て自体を過保護にしているのである。よって、傘立て本来に求められている機能として、人によっては不合格と捉える方もいるかもしれない。

形などは特筆すべきものはなく、当方のお得意の構造をふんだんに採用し、ちょこっとだけお遊びで板を斜めに配して「抜け感」とポップさを狙ったりしたが、その辺の考えが浅はかであるとも思う。しかし、この斜めに配した部材は、それなりに手間がかかる。一本一本ホゾで組み込まれているのだが、製作してみて気が付いたが、斜め部材は塗装後に組み込みが可能なのである。塗装をウレタン塗装としているので、後からこのような部材を組み込む方法は効率が良く、仕上がりの良さにもつながる。しかしながら今回はウレタン塗装の失敗例が幾つか出現した箇所があるので、結果ダメダメなのではあるが、文字通り「斜に構える」のも、ものづくりにおいてたまには良い方向に転ぶこともあるなと気が付いた次第。

2019年の6月、まさに数日後には全国的に梅雨入りするとみられるこの時期に、なんとか傘立ては完成した。それなりにポップな雰囲気で、現代の居住空間にも違和感なく溶け込めそうだし、憂鬱な雨の日を、少しだけpopにしてくれると、身勝手に想像しているのである。

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